IBM Tiger ベータ版デビュー

もう随分と前の話になってしまった。
IBMからTigerのBetaが公開中である。(要登録)

IBM - Japan

*1

この件に関しては方々に記事が出たがMYCOMPCの記事が参考になる。
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2005/10/13/020.html


しかし、より参考になるのはやはりtheserverside.comにて聞かれる生のユーザの声だろう。
IBM releases in beta the JDK 1.5.0

やはりリリースが遅いという評価が多い。
他にはなぜWindows用がない?という指摘が興味深い。
わき道にそれてメインフレームのパフォーマンスの話になっているのも面白い。
曰く、

Performance-wise, the current "Z" is the equivalent of a P3-800Mhz. Never buy a mainframe for performance.

On the other hand, the Z will have a one-bit memory error only once every 358 years (or something like that). If you need the highest levels of RAS (Reliability Availability Serviceability) then the mainframe is quite possibly the best choice.

ハードウェアが指定されていないので、どのハードがP3-800MHzと同じなのかはわからないが、メインフレームはやはり相当に遅いようだ。
これはハードのせいとは限らない。IBM製のメインフレーム用のJVMがどれだけ効いているのかわからないからだ。Javaというのは因果なもので、いくらハードが速くてもJVMの性能が悪ければやはり性能がでない。


ここでMYCOMPCの記事にもどるが、記事ではIBM製のJVMのパフォーマンスの良さが触れられているが、気をつけなければいなけいのはその評価はPentiumでしか有効でないことだ。例えばPowerPC上のJITの性能比ならAppleIBMの比較でも探さなければいけない。もっともそんなデータはないだろうし、AppleJVMIBMの協力でできている可能性は高いが。*2


さて、肝心のIBM TigerPentiumでの性能である。
まずSunの現状はとても高速である。産総研の首藤氏の計測によると同じPentium4のPC上でSunのServerJVM5.0はIBMのJDK1.4.2よりも速いそうである。
で、このベータの性能であるが以下のコメントによると

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この記事のコメント欄、一番下を見ると次のような記述がある。

I tried the IBM JDK 5.0 beta on scimark and got a score of 304. With the JDK 1.6 beta (using -server), I got 350…so the IBM VM seems to be slower, atleast in this benchmark.

なぜかこの人はMustangと比べてしまっているが*3、それと比べると遅いようだ。
BrianGoetz氏の記事によるとMustangはGCに改良が加えられているためより高速になっているそうだ。
まだベータ版なので結論を出すのは早すぎだけれども現時点での結果はとりあえずそういうことで。


IBMが今回のJDKにてSunのIPフリーを実装したのは今後のJava業界にとって大きな波乱要因になりそうな気がする。まだクラスライブラリーがSun製のままなので大きな問題にはならないだろうが、あまり業界内抗争は見たくないものだ。
そしてIBMTigerリリースがこれだけ遅くなってしまったことに対してあらためて悲しみを感じる。IBM的にはサーバビジネスさえできれば良いのでJavaEE5までは猶予期間との考えなのかもしれないが、開発者にとってTigerの大きな改良はとても有益なものだ。またユーザにとってもTigerの高い性能とJVMの監視機能は有益である。例えばtheserverside.comにて公開されたアメリカのWallmartのケースの場合、既存のWebサイトをTigerに置き換えただけで処理の増強を図れたとある。また多くのライバルは既にJ2EE1.4のサーバにJDK5.0を提供している。
開発者やユーザが本当にほしいのは、安定した高品質、高機能な製品のタイミング良いリリースだと思われる。IBMには予定どおりに年内の正式リリースとJavaを政争の道具とすることがないように願いたい。


また開発者として気をつけなければならない点としてIBM製のVMを使うということはIBM製独自の部分について注意が必要になるということがあげられる。例えばIBMDeveloperWorksで連載されているBrianGoetz氏の連載はSunのJVMについての解説である。そのままIBMには当てはまらない。JVMにおいてGCの実装等が仕様外であることは性能の違いなどに現れるので良い点であるのだが、運用面において共通な知識が利用できないのはつらい点である。

*1:いきなり余談だがJRE1.4.2が単独でダウンロード可能にされていた。以前まではリンクがなかったと思う。画面が黒基調でLenovoのページになっているので驚くのだがまだURLはIBMのようだ。

*2:それならIBMTigerがもっと早くでても良い?

*3:でもMustangのスナップが存在する時点でTigerがBetaなIBMがやはり悪い?